迷子になった我が社の働き方改革の行方

 

労働時間の減少による影響を上回る生産性の向上を図ることで、成果物(アウトプット)の質と量をいかにして確保するかの提言を、これまでの自分の経験を基に実際の現場で再現できる形で示してみた。

はじめに

4月から始まった働き方改革

労働時間の上限規定や有給休暇の取得日数規定など、労働時間を削減することが主旨であるかのような対応が目に付くのが現状のように感じている。

我が社でも、システマチックな勤怠管理による労働時間の管理が始まった。会社にとっては、規定を守らなかったら罰則もあるため、管理・注力する必要があるのも理解できる。しかし、そこで止まってしまっているという印象が拭えない。規定を超過した、もしくは超過しそうな人、チームに対し、「時間をオーバーしてるので、残業を控えてください」や「気を付けてください」などと注意は促すものの、本質的な対応には至っていない。

 どうも我が社には、現場にフィードバックできるノウハウが欠けているようである。というか、ノウハウは持っているはずであるが、そのノウハウを活用するためのフィードバックが欠けている。

 そこで、これまでの自分の培ってきた経験を基に、いかにすれば労働時間を縮減しつつ、アウトプットの質と量を確保していけるのかを考えてみた。

働き方改革は、生産性に影響を与えているか

リクルートワークス研究所が発表したレポートに「働き方改革時代にマネージャーは何をすべきか -働き方改革の中間報告-」がある。この中での報告を言い方を少し変えていえば、次のようなことが報告されている。

「労働時間を減少させる」 ⇒ 「生産性は若干上昇する」 ⇒ しかし、「生産量(成果)は減少する」

労働時間が減少することで、仕事の取捨選択が進み、生産性は上昇する傾向にある。しかし、労働時間の減少の影響を上回ることができないため、生産量は減少する。という図式になるということ。

よって、『いかに成果を確保しつつ、働き方の見直し(労働時間の縮減)を行うかを考えることが必要』である。

 働き方への提言

① 作業を細かく分割する

② PDCAを繰り返す

③ 大きい課題から取り組む

④ チェック・照査を考慮した工期設定

⑤ 思い込み・確認不足をなくす

⑥ 過剰品質の防止

⑦ 標準化・単純化を目指す

⑧ 長期的な視点での取組み

① 作業を細かく分割する

作業に取り掛かる前に、できる限り作業を細かく分割・洗い出しをしてみる。そうすることで作業間の関連性が明確になり、優先準備付が可能となる。細かく分割されたひとつひとつの作業の集中することで、効率が向上する。また、並列作業が可能な作業が分かることで、複数人での作業の分担が可能となる。

② PDCAを繰り返す

計画、実行、評価、改善を繰り返すことが、精度を向上させる。PDCAのサイクル頻度が大きいと、目指す精度のレベルまで階段状に上っていくことになる。もし一度でも階段を踏み外すと時間のロスする程度が大きくなってしまい、リスクとなる。PDCAを細かく繰り返すことで、あたかも直線のように目指す精度のレベルまで上っていくことが可能となる。一度のミスの損害も最小限に抑えられる。

③ 大きい課題から取り組む

いくつかの課題を抱えている場合、どうしてもとっつきやすい小さな課題から取り掛かってしまうのは、人の心理として仕方がないこと。しかし、小さな課題をいくつこなしてもなかなか成果に近づけないし、必要な工期も明確にすることができない。また、工程の後半に大きな課題を残しているため、常にやり直しの度合いが大きくなるリスクをはらんでいる。それを防ぐためには、あえて大きな課題から取り組むことが必要である。大きな課題に対応することで、工程の前半で成果に近づくことができ、先々の工程管理もしやすくなる。

④ チェック・照査を考慮した工期設定

作業に取り掛かる前には、工期を設定する必要がある。工期を設定する際に留意すべきは、頭を切り替えてのチェック・照査をする時間を確実に確保することである。徹夜や残業続きでの作業では、思い込みや勘違いを起こすリスクがある。完璧だと思って仕上がった成果も後で見直すと、「なぜこんなことになっているのか?」と目を疑うような成果になっていることも珍しくない。どんなに完璧だと思える仕上がりでも、最低一晩はゆっくりと頭を休めて、チェックや照査をする時間を確保することが重要である。そうすることで、必ず見直すべき箇所が見つかるはずであり、そうして精度の高い成果として完成したといえるのだろう。

⑤ 思い込み・確認不足をなくす

事前の打ち合わせであれだけ要求されている性能を確認にしたにもかかわらず、作業を行っていくうちに自分の思い込みが徐々に入り込み、要求性能とは違った方向へ向かってしまうことがある。結果、要求されたものとは全く違った成果品を納品することとなり、これまでの作業が全くの無駄となるり、クライアント(上司であったり、取引先であったり)の信頼も失うことになる。こうならないためには、事前打ち合わせで要求性能は十分に確認・把握したと思い込まずに、進捗状況やこれまでの成果をコマめに提示し、フィードバックをもらい、目指すべき方向をその都度修正していくことが必要である。

⑥ 過剰品質の防止

要求性能以上の情報を盛り込んだ成果は、自己満足。読み手にとっては、どうでもいい情報が盛り込まれることになり、読みにくいだけ。

⑦ 標準化・単純化を目指す

定型的な作業は、その手順や、様式のテンプレート化や単純化が必要である。同じ作業をするにしても、人それぞれの手順や様式があり、統一が取れていないことが少なくない。テンプレート化や単純化、共有化を図ることでの効率性の向上につなげることが必要である。

⑧ 長期的な視点での取組み

日々の仕事に追われ、目の前に迫った仕事から順に手を付けざるを得ない状況は、確かに『忙しい』といえるのかもしれない。しかし、それを別の視点から見てみると、とにかく目の前に迫ってきた仕事を重要度や優先順位などを考えることなくこなしているにすぎず、ある意味で『楽』な作業であるともいえる。このようなやり方では、業務量の多い・少ないに左右され、ある時期は残業時間が増え、ある時期は定時退社と、変動が大きくなる。労働時間の削減を目指すためには、業務量の平準化を図る必要がある。そのためには、先々を見越した中長期的な視点での戦略が必要である。

まとめ

ここで書いてきたことは、私個人のこれまでの経験から得た知見である。

労働時間を縮減しつつ、業務成果への負の影響を抑制することは、なかなか困難である。

ひとりだけの知見では、この難問に対する的確な答え導き出すことは困難である。

各人がこれまでの経験から得た知識や知恵を出し合い、共有し、試行錯誤を繰り返しながら常に成長する技術者・企業であり続けるために取り組むことが必要である。

そのためには、まずは社内に向けての情報発信、問題提起などの取組みから始めたいと思っている。試行錯誤を繰り返しながら。

以上