雨の日にコンクリート打設を行ってもよいのか?

雨の日にコンクリート打設を行ってもよいのか?


鉄筋も組み上がり、型枠のセットも完了、労務・機械・ 材料の手配も完了し、準備は”OK”。
「さー!やるぞ!!」となった当日、天気は””。 まだ降り続きそうな気配。
たまに遭遇するケース。

こんな時、 あなたならコンクリート打設を”実施しますか”それとも” 中止しますか”。
コンクリートに対し、 少なからずの知識を持ち合わせている人なら誰もが「あっ! やばい」と思うはず。
でも、 その思いをなかなか行動に結び付けられないケースが多々見受けら れます。
コンクリートの規模が大きくなればなるほど。
小さければ、それはそれで”強行だー”となるかも。


”私の考えは?”と思ったので、考えた。


雨の中でコンクリートを打設することは、どんな養生・ 対応を行ったとしても品質への影響を避けることはできない。 よって、雨の中でコンクリート打設をするべきではない。


合理的と思えるこの考え。
しかし、これはいろいろと軋轢を生むことになるでしょう。
私が、 この工事の全権を握っているのだとすればこれでも通用するのでし ょうが、残念ながらそんなケースは考えられないので。


そこで、『雨の中でのコンクリート打設は、 本当に品質へ影響を与えるのか?』という問いに直してみると。


コンクリートの品質は、構造物として必要な強度が設定され、 耐久性を確保するためにセメント量や水量を無駄に増やさないよう 規定されている。
このため、コンクリート中に雨による水が入ることは、 強度や耐久性に影響を与えることになる。


ここで、考えなければならないのは、『 品質に影響を与えることは確かであるが、 果たして許容できない影響なのか?』ということ。


コンクリートの配合を決める上では、 さまざまな事象による品質への影響を考慮して“余裕しろ” を設定している。

影響を与える要因としては、材料のばらつき、 天候、作業員の熟練度など作業のばらつき、 養生方法など多岐に渡り考えられる。

では、『どこまでが”余裕しろ“なのか』

答え『わかりません』

どこまでが許容できるリスクなのか、線引きすることはできない。 というのが、結論です。
 
こう言ってしまうと、結局最初の答えに戻ってしまうので、 もう少し。
 
“安全”を例にして考えてみる。
安全とは、受容できるリスクがないこと。」と定義される。
要するに、ある範囲内でのリスクを許容するということ。
では、“許容できるリスク”とは、どんなリスクか。
スリーステップメソッド”に基づき整理すると。
1ステップ
 危険なところがない状態(本質的安全)
2ステップ
 安全装置を付けたり、防護策を施したりすることにより対応
3ステップ
 守るべきことを明確にし、周知・理解を促すことによる対応

これを、今回のテーマに、 少し乱暴にではあるが当てはめてみると、次のようになる。

1ステップ
 好天の時にコンクリート打設を行う
2ステップ
 雨の影響がないように屋根を設置、シートを掛ける、 滞水を取り除くなどにより対応
3ステップ
 守るべきこと( 最大の努力により雨水をコンクリートに触れさせないこと) を明確にし、実践する

ここでの重要なポイントは、“ ステップの順番でリスクを低減すること”である。あくまで“ 順番に”である。

このようにしてくると、『では、 雨の日にもコンクリートを打設してもいいんですよね』となる。

そんな短絡的な結論か?

もし現時点で、「雨が降っていますが、 コンクリートを打設してもいいですか?」と聞かれれば、

『雨の中でコンクリートを打設することは、どんな養生・ 対応を行ったとしても品質への影響を避けることはできません。 よって、雨の中でコンクリート打設をするべきではない。』

と答えるでしょう。

まずは、ここからスタートです。
 
一応の結論?を見たわけですが、この問題にはもうひとつ、 本質的な問題が隠れていると思っています。
それは、

品質に影響があることを理解していながら、 なぜ中止する判断ができなかったのか

という問題です。

先にも書いたように、コンクリートに対し、 少しでも知識を持っている人であれば、 雨の日のコンクリート打設が良いとは、誰も思わないはず。 なのに、打設を実施しようとする。

そのような判断をさせてしまう背景には何があるのか。

これをを考えていく必要がある。

コンクリート打設が絡むような建設現場には、“限られた工期” と“限られた予算”の中で“限られた人材” を最大限に有効に活用することが求められています。

このような様々な制約条件が絡むことにより、 上司や下請業者からの見えないプレッシャーが、 若い現場担当者の判断に影響を与えているのではないだろうか。

今回のケースで本来考えるべき“品質への影響”が、 全く違うテーブルで“経営への影響” にすり替えられるという構図が見えてくる。

高齢化や高齢者の退職などにより経験豊かな技術者は減少しており 、今後さらに加速していくことが明白である業界において、 若い技術者の経験・技術力の向上を図るためにも、 いらぬストレスは無くしていくことが必要不可欠である。

現場担当者が自身をもって判断できる心理的安全性が確保された体 制へ見直していく必要があることも、 今回の問題を考える上で見えてきた課題である。

 

今回の“雨の日のコンクリート打設問題” の解決の別の糸口としては、“(ハーフ)プレキャスト化” がある。

人材不足、 経験不足などを補う上でも今後プレキャスト製品の活用がさらに進 んでいくことが考えられる。

現場打ちに対し、経済性に劣ることとなるが、効率的な施工、 品質の向上等の効果もあり、メリットも少なくない工法である。

検討の余地有り。

以上